2004 AHS シンポジウム

特別講演 「ITS、セカンドステージへ 〜スマートウェイ推進会議の中間報告〜」


国土交通省道路局
ITS推進室 企画専門官
森山 誠二

1 スマートウェイ推進会議について

 スマートウェイ推進会議は、5年前の1999年に設置しました。99年6月に提言をいただいています。(図表1)

図表 1

 この提言は、ITSの中でインフラ部分としてスマートウェイという概念を導入し、どういうふうに進めていくのか、スマートウェイの意義、スマートウェイの機能と要件、どう実現していくか、その結果社会がどのように広がっていくのかを検討し、そして、国家政策として位置づけながら、いろいろな部門の方との連携、協調によって推進することが大切だという内容となっています。(図表2)

図表 2


 スマートウェイの概念を簡単に示したのが図表3です。そもそもITSは、人と車と道路の三つを一体的に考えていこうというものですが、その中で主に道路部分をしっかり支えていくという面でスマートウェイという概念を導入しています。この考え方はいわゆる路車協調で、ある意味で世界的にも先進的な取り組みであり、日本が世界をリードするものになっています。現在(2004年7月)まだ法案は通っていませんが、アメリカの道路関連法案(SAFETEA)の中でも、こういったものが多く書き込まれています。(図表3)

図表 3

 

 推進会議のメンバーは、経団連名誉会長の豊田章一郎さんをはじめ、各界の著名な方、各業界の長の方、関係省庁の責任者から構成されており、幅広い議論をしていただいています。(図表4)

図表 4


 6月9日に新しい意味では第1回となる会議を開催しました。ITSに関する経緯、ITSがいよいよ世の中を変え始めたという姿、それから導入後10年で迎えるセカンドステージの方向性、こうしたことを中心に意見交換、議論をしていただきました。次回は7月27日に予定しており、セカンドステージの方向性、推進方策について議論していただくように考えています。

 第1回目の会議を踏まえて、6月中旬から6月末まで意見募集をしました。これについても相当程度の方から意見をいただいており、ITSに関する関心がかなり高まってきていると思っています。(図表5)

図表 5


 以下、会議における具体的な議論の内容について、ご説明したいと思います。

2 社会を変え始めたITS

(1)IT及びITSの進展

 10年前はITSが大切だ、これからの一つの方向性だといったことがポイントであったかと思います。実際には、カーナビゲーション、VICS、ETCなどは、話としてあったものの、まだ現実のものにはなっていませんでした。(図表6)

図表 6

 ところが10年後の現在を見ますと、カーナビゲーションは既に1400万台を超え、日本にある車の5台に1台、乗用車ベースでいいますと3台に1台といったレベルにまで普及しています。また、ETCは導入して3年程度ですが、導入当初はなかなか普及が伸びないといった話もありましたが、現在では300万台を超え、利用率も2割を超える状況になってきています。

 いまの段階では個別のパーツでありますが、カーナビは多くの人になじみがありますし、ETCもかなり市民権を得てきた状況です。やっと社会的な存在としていろいろな議論ができるようになり、ここまで普及したのだから、ほかにも何かできるのではないかといった期待もかなり高まってきていると考えているところです。

 VICSも、1000万台弱の普及に至っていますし、ASV車両についてもかなりの進化を遂げています。プローブカーというバス等を中心に、位置情報を収集し、それを交通調査の参考にしようといったことも本格的に始まっています。その他IT関係も、10年前、5年前に比べると、格段の進歩をしており、全体的に大きな進展を見ています。

(2)現れ始めたITSの効果

<1>ホームページからの道路情報の入手

 具体的な現象としては、例えば道路関係ではホームページを使って利用者に情報提供サービスを進めています。図表7はある地方整備局のホームページのアクセスを見たものです。各地方整備局で、気象情報、工事の情報、路面の状況など、いろいろな情報を発信しています。例えば冬期にアクセスが増えていたり、梅雨や台風の時期に増えているという状況になっています。要するに、利用者が出発前に、ホームページで道路などの状況を確認しているということで、道路情報の提供が、実際の交通行動に深く関係している状況になっていると理解しています。

図表 7

 ホームページのアクセス数は、現在は全体で2500万件ぐらいですが、道路局の中では一つのメルクマールということで、数年のうちに1億件ぐらいまで上げるよう、利用者サービスを向上させようと考えています。

<2>道路路面情報などの付加価値情報の提供拡大

 提供する情報についても、道路情報板の情報をそのままホームページで見られるようにするとか、駐車場の案内システムの情報をホームページで見られるようにするとか、路上工事関係の提供を細かく出すとか、路面の状況を知らせるとか、かなり工夫を凝らしています。こういった形で利用者のニーズに応えようと努力しているわけです。(図表8)

図表 8

<3>カーナビによる利便性向上

 カーナビはかつては特定の人、若者向け、流行の先端というイメージもありましたが、現在では5台に1台が搭載していて、非常にわかりやすく、機能も発展しています。

 昨年、道路局がアンケートをしました。カーナビに対する利用者の評価で特徴的だったのは、高齢者の方ほど評価が高いという結果が出てきたことです。若い人も当然便利なのですが、高齢の方ほど、地図を見るのがつらい、道順を覚えるのがつらいといったことになるわけで、そういうときにカーナビがあると非常に安心して行けるというのです。ある意味で、高齢者の運転支援に大きく役立つツール、といえると考えています。(図表9)

図表 9

<4>バスロケーションシステムによるバス活性化

 ロケーションシステムは、バスの位置情報を提供するものですが、これもITS、特にGPSを使うとかなり簡単に位置情報がとれます。調査の一環ということで、かなりのバス会社と連携して情報をとっています。現在、日本には一般乗り合いのバス車両が6万台ぐらいありますが、そのうちの1割程度にこういう機能が入っています。

 その情報を頂きながら、道路の詳細なデータを提供し、バス会社はそのデータを使って利用者に時間情報の提供などをしています。その結果、バス利用者が増えた、評判がよいなど、非常に好ましい結果が出てきています。(図表10)

図表10

<5>ETCの普及による料金所渋滞の減少

 ETCは、首都高速道路で利用率が22%を超えたという速報も入ってきています。例えば、首都高が東北道につながるところの川口料金所では、通過交通量は年々微増傾向にありますが、ETCの利用者が一昨年2%、昨年6%、今年20%というふうに増えてきており、その結果、渋滞が2年前の半分に減るという結果も出てきています。利用率が30%ぐらいになると、渋滞がほぼ解消するのではないかという試算もあります。こういうことが各料金所でこれからどんどん具体化するのではないかと考えています。(図表11)

図表11

<6>多様な料金施策の実現(首都高のETC夜間割引実験)

 同じく首都高速道路では、多様な料金施策ということで、割引の実験などを進めています。図表12は、昨年首都高速で実験したものです。昨年11月から首都高速で3カ月程度実施した実験は、夜間に割引を導入しました。人間による徴収の場合、細かい料金設定は不可能ですが、ETCですから、非常に細かい割引の設定が可能となります。

図表12

 ETCの利用者は、実験中は全体で2割増、大型車は4割増という結果が出ています。また、平行する一般道路から高速道路に交通量が転換したと考えられます。国道20号(甲州街道)が並行している箇所で、20号の交通量が若干減っています。その結果、通過所要時間も紫から緑のように減ってきており、結果的に沿道の環境にもよい影響が出ています。(図表13)

図表13

<7>多様な料金施策の実現(阪神高速道路における環境ロードプライシング)

 阪神高速道路では、環境ロードプライシングということで、3号神戸線に集中している交通量を湾岸線に迂回させようという取り組みをしました。通常1000円をETC車に限って800円にしたのです。当初、ETCの設置台数も多くないため、なかなか利用者は増えなかったのですが、今年2月だけさらに200円割引をした結果、利用者は6割増えました。3月から800円に戻したのですが、1回使うとなかなか使いよいことが理解されたようで、そのまま定着しているという結果も出てきています。こうしたETCによるいろいろな料金施策は、幅広く展開していくという広がりを見せている状況です。(図表14)

図表14

<8>地域におけるITSの取り組み

 各地方では、経済団体、自治体を含めて協議会などが立ち上がっていますし、大学の関係でもITSのセンターがつくられるなど、地域からITSを盛り上げるような取り組みが活性化しています。(図表15)

図表15

(3)現在のITS関連市場

 ITS関連市場にこれまでどれぐらい投資されたかという、いわゆるストックベースで見ると、情報提供系、インフラ設備、サービス関係で既に12兆円程度の投資がされています。かなり大きな市場になりつつあると理解しています。(図表16)

図表16

3 セカンドステージの方向性

(1)スマートウェイの今後のあり方

<1>各情報分野におけるセカンドステージ

 以上の現状を踏まえて、いよいよセカンドステージに入って、どういうふうな方向に進んでいくのかといった議論になります。

 まず、ほかの情報分野ではどういう流れをたどっているかを整理しました(図表17)。パソコンは、かつては研究所や研究室で特別な人間が使う専門的なものだったのが、1995年ぐらいにOSという使いやすい仕組みが入ることによって、主婦でも子供でも使えるようになり、遠隔地の医療でもパソコンでカルテのやり取りをするような仕組みができたり、小学校では必須科目になるなど、完全に生活のツールになってきています。

図表17

 携帯電話は、導入は早かったのですが、初期段階では一部のビジネスマンが使う、非常に重い、特殊なものでした。これも電話機の改良や、携帯電話の会社が違ってもつながる、PHSともつながる、インターネットともつながると、かなり共通化が図られて使い勝手がよくなり、やはり1995年ぐらいから大幅に増加しました。現在では8000万台と、大人はほとんど持っている状況で、完全に社会にとってなくてはならないものになっているのです。(図表18)

図表18

 一方、ITSは、個別のシステムは導入から10年たってかなり伸びてきました。ETCは300万台で、まだまだ伸びていますし、利用率も20%間近です。料金割引等によって、社会的な効用が起こり始めています。VICSも平成8年ごろから導入され、昨年度の北海道北見地区を最後に全国のサービス展開が終わりました。(図表19)

図表19

また、ETCを使った簡易な料金所がスマートICです。いままでは料金徴収所の関係で、非常に大きな敷地を要する、重い仕組みのインターチェンジでしたが、ETCによって非常に簡単な構造のインターチェンジが可能となりました。

 サービスエリア、パーキングエリアには業務用の車両が入る通路がありますから、それをETC車に限って一般の人に開放しようという試みも行っています。これは今年度、社会実験ということで実際に取り組み始めており、多くの地域から非常に熱いまなざしを受けて進めているところです。こういうふうに多くの場所にインターチェンジができることにより、目の前を通る高速道路が地域にとっての大きな財産になるといった状況になり始めています。

 それから個別の仕組みについても、カーナビとETCが物理的に同じ箱に入る一体化、カーナビ自体の利用のわかりやすさも進んでいます。(図表20)

図表20

 ホームページの関係でも、路上工事をわかりやすく示すような仕組み、VICSをうまく連動させる仕組みなどの取り組みが進んでいます。駐車場の満車、空車の状況をホームページで出す取り組みもあります。またカーナビが通信施設とつながり、テレマティクスという形で外の情報がとれる仕組みにもなってきています。

 バスの位置情報提供についても、GPS等を使うことによって非常に軽く、使いやすい形になりつつあります。

<2>新たなモビリティ社会の展開

 そういった進展を踏まえて、いよいよETC、カーナビ、VICS、その他の施設が互いにリンクできるような状況になりつつあると考えています。10年前に横浜でITS世界会議が開催され、今年の秋には名古屋で開催されますが、これを一つの契機として新しい社会的な存在としてのITSになると考えています。(図表21)

図表21

 このシステムが進化、融合、連携することによって、交通の質が向上する段階に来ているのではないかと考えています。自動車社会になって100年以上ですが、非常に便利である一方、事故や環境問題にはなかなか明確な解決がありません。これをITSの中で抜本的に解決できる一つの兆しがあるのではないかと考えています。(図表22)

図表22

 地方都市で高齢者のモビリティをどう確保するかは非常に大きな問題になりつつあります。公共交通機関がなかなか整備できない地域では、高齢者が車を運転できるかできないかで大きな差があるわけです。例えばカーナビは非常に使いやすいという評判もありますが、そういったことも踏まえ、高齢者のモビリティの確保にITS、スマートウェイがどう貢献できるかは、一つの大きなキーワードになると考えています。

 また、いま地域の再生ということが盛んに言われていますが、例えば高速道路があれば、その地域が非常に活気づくのは間違いない。新しい高速道路をつくらなくても、近所に高速道路が通っていれば、そこに新たなインターチェンジができると元気が出る可能性があります。

 ビジネス環境の改善もあります。物流にITSを利用して配車し、荷物を集めることで効率化が期待できます。また、トラック運転手、バス運転手、路上で工事をしている方などの業務の効率化にもITSが大きく寄与するでしょう。自動車は情報がかなり遮断された空間ですが、これもITSによって十分安全に配慮する中で外と情報がつながる空間にできるのではないかと考えています。こういったことが今後目指すべき方向ではないかと考えています。

(2)スマートウェイの推進方策

 一つの社会の姿を目指してスマートなモビリティ社会をつくっていくためには、国家戦略としてスマートウェイを推進していく必要があります。交通死亡事故ゼロ、ETC標準装備、高速道路インターチェンジ倍増といった個別の目標を具体的に進めていくための仕組みとして、どういうサービスを提供するかというアプリケーション、どういう基盤整備をするかというプラットフォーム、地域との連携、産学官連携という意味でのリレーションという三つを掲げています。(図表23)

図表23

 ますますITSによるサービス提供が期待されています。安全・安心、豊かさ、環境、快適・利便など、一部できている部分もありますが、こういったサービスをすることによって、新しい社会を目指していくことが必要だと思っています。そのときに基礎的なサービスとして、決済、車両の認識、情報提供、案内・警告といったことがITSで可能になりますから、その技術を使いながら、さまざまなサービスを展開していくことが必要だと考えています。(図表24)

図表24

 ただ、サービスごとにいろいろなハード、ソフトの仕組みや車載器の関係が別々のパーツになるようではサービスにも限界がありますから、そろそろ共通基盤づくりといったことも必要です。これがこれからの一つのポイントではないかと考えられているわけです。(図表25)

図表25

 リレーションの関係では、三つの大きな分野があります。技術研究開発の関係は、ITSの世界では産学官でかなり連絡がうまくいっていると思いますが、そういったことを一層進めていく。

 地域・市民との連携は、第2ステージで新たに必要だと思います。どういったことが地域にとって必要なのか、そのためには地元の自治体やNPO、市民団体といった方との取り組みはどうすればよいか。特に、ITSの場合には、実験的な取り組みが必要になりますから、そういうものに地元の市民団体、NPOの方と一緒に取り組んでいくことも必要であろうと考えています。

 国際標準化ということは前から言われていますが、ある部分では日本が世界を引っ張り、ある部分では世界との協調という面も視野に入れながら、国際的なマーケットもにらみつつ進めていく。これも今後一層必要ではないかと考えています。(図表26)

図表26


 今年10月に約10年ぶりにITS世界会議が名古屋で開かれます。この中で、日本で取り組んでいることをいろいろ紹介しようというので、テクニカルツアーという催し物、現地見学等があります。各省も関係団体も参加している中で、日本がどういうふうに取り組んでいるのかを力強くアピールしていこうと考えているわけです。(図表27)

図表27

 以上、前回の会議での議論の整理をしました。今後は、意見募集でいただいた意見や、本日の会議での意見等も踏まえて、次回のスマートウェイ推進会議の中で議論して頂き、それを提言としてまとめて頂く予定です。それに基づいて新しいセカンドステージに向けたスタートとしていこうと考えています。

 こういったことを進めていく上では、きょうお集まりの方々のような、いろいろな分野の方の連携、協力が前提になりますので、国土交通省といたしましても、他の関係省庁とも連携しながら一生懸命頑張っていくつもりでございますが、併せて今後の協力についてお願いしたいと考えています。





Copyright (C)1998-2008 Advanced Cruise-Assist Highway System Research Association